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男性のプライドとバイアグラ

男性のプライドとバイアグラ

男性にとって、勃起というものが、気持ちの上でとても大切なものであるということを実感するようになったのは、30歳を過ぎてからでした。男友達と気のおけない間柄になっていろいろ話をするうちに、ふと漏らす本音を聞いたり、恋人になった人との性行為でうまくいかないときの様子をみたりするうちに、そのことが男性の自尊心に大きくかかわっているらしいことを感じるようになったのです。なるほど「男はプライドの生き物か」と腑に落ちる気がしました。
20代の時、私は下半身不随の人と、短い期間でしたがお付き合いしていました。彼は上半身で器用に車の運転をこなし、身障者であることを卑屈に感じることなく、人生を楽しんでいました。事故で脊髄損傷になったのですが、「下半身不随になった男が、意識回復してまず確認することは何だと思う?勃つかどうかだよ。」この時点では、私はまだ、男性のそのような切迫した気持に理解を示すことができませんでした。
ホテルに行き、彼がベッドの上でおもむろにバイアグラを取り出したことがありました。「これは効くよ」と。彼はまったく勃起しないわけではなかったのですが、勃起力がやや弱かったため、処方してもらったのでしょう。
結局、青い錠剤を見せてもらっただけで、私との性行為でそれが使われることはなく、私が彼の上半身を丁寧に愛撫していくうち敏感に反応してくれ、彼が「こういう昂奮の仕方(生殖器以外での性行為)というのもあるんだな」と感慨深げに言ったことが印象的でした。
そんな経験もあり、私は挿入だけがセックスではない、勃起にこだわる必要はないという考えを持っていました。
そんな考えが、実は男心を知るうえで浅はかなものだったのかもしれないと気づかされたのが、前述のように30歳を過ぎてからの出会いでした。
1人目は、30歳の時にお付き合いした恋人でした。年下の彼は、それまで女性経験のない人でした。ナイーブさと男根主義的な考えを併せもつ人でしたから、初めての性行為の時に、なかなか勃起できない、勃起はしてもまた萎えてしまうといったことにひどく落ち込んだ様子でした。その後何度か性行為はあったものの、愛撫が中心で、結局、挿入してお互いが達するという経験のないまま、彼とは別の要因で別れてしまいましたが、彼はずっとそのことをひどくコンプレックスに感じていたようでした。
2人目は35歳の時に知り合ったうつ病の友人です。よく深夜に色々な話をしていました。ある夜、恋愛の話になり、抗うつ薬の副作用で勃起しにくくなるのが不安だということを聞きました。そんなことがそんなに気になるのかと問うと、「それは当然めちゃくちゃ気になる!」とのこと。「それは女性、少なくとも私からすると、愛しあう上で必ずしも重要なことではないように思える」と言うと、「でも男ってのは気になるもんなんだよ」との彼の答えに、男心のわかっていない自分を感じたのでした。
今考えてみると、もしかしたら彼らはバイアグラを利用することを考えていたかもしれません。
結婚した今、もし夫がEDになったとしたらどうするか。できることなら、副作用のあるバイアグラのような薬は使ってほしくないという思いがあります。夫とひとつになれない寂しさはあるかもしれないけれど、私は前戯だけでも満足できるだろうし、男性がEDの状態であっても性欲を満たす方法があるのなら、それを試してみたいと思います。けれど、もしどうしてもそれを利用してみたいと言うのであれば、そこは夫に任せるしかないのだろうとも思います。男性のプライドというものは、女の私にはあずかりしれないところにあるような気がするからです。